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霞ヶ関ファイル

滝実法務大臣の記者会見 <11・9>

ゴビンダ冤罪問題

【記者】東京電力女性社員殺害事件で、ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの無罪が確定しました。判決に対しての率直な感想と、逮捕から15年も身柄拘束されたことについて、どう考えられるか。

 また、ゴビンダさんは警察や検察に対して謝罪を求めていますが、それを果たすべきと考えるかどうか。

【大臣】私も報道で確認をしている程度ですが、警察庁長官が大変申し訳ないと今回改めて発言をしています。検察庁も今回のこの問題については、お詫びを申し上げたという趣旨の発言をしているように、私も確認をいたしています。

 その流れの中で見れば、この事件の一つの大きな教訓として、ゴビンダさんについては、十分な解明がなされないままに有罪判決があり、その結果15年という長い拘束期間が経ってしまったということは、大変申し訳ないと私からも申し上げておきたいと思います。

 その上で、警察・検察当局もこの種の問題について改めて大きな教訓として、捜査あるいは起訴に当たっての戒めとしなければいけない、と思っております。

【記者】東京電力女性社員殺害事件の関連で、今日の質問主意書の中で、マイナリさんの件が冤罪に該当するかどうかという質問が出ており、政府は特定の見解を有していないという回答になっています。政府として冤罪の定義がないということだからと思うのですが、15年間拘束されていた方が冤罪に当たるかどうかという点については。

【大臣】刑事局の立場からすると冤罪というのは、厳密な定義の上でなければ冤罪かどうかの判断というのを軽々に言葉で表すことができない、そういう伝統的なものの考え方に従っておりますので、そういう表現になっていると思います。ただ、常識的に世間一般の感覚から冤罪を広くとって言えば、本来罪になる必要がないものが罪になったという意味では冤罪と言えないこともないと思います。ただ、今回の場合は、定義上どういうものを冤罪というかという前提条件をきちんと文言として表現した上で言っているわけではありませんので、そういう意味では冤罪ということは使いにくいということだったのです。

【記者】再審無罪の判決が確定したことを受けて、当時の捜査に不十分なところがあったのかという点と、証拠開示については適切であったかという点について見解を。

【大臣】当時の捜査の中身については、私の方から申し上げられませんが、少なくとも今回、決め手となったことは、被害者の爪を検査してDNA鑑定を新しい技術でやったということです。当時も捜査過程では、爪については、顕微鏡で検査をしていますが、何も付着物のようなものは見当たらなかった。当時の技術としては、微細なDNA鑑定はできるような状況では恐らくなかったのかなと思いますけど、少なくとも顕微鏡で検査した結果、微細なものを発見することができなかった。そういう意味では当時、捜査当局はかなり爪に絞って注意を集中して捜査に当たったということは窺えますが、爪に何も証拠となるものが認められなかった。それが再審の段階になって、当時の技術では、目に見えて分からなかったものでも、新しいDNA鑑定の技法が取り入れられて、分かるようになってきた。そういう意味で、もっぱら技術的なサポートによってこの事件が有罪とするには疑わしいという結論を導き出すことができたと言えるわけですけれども、そのような事情で、有罪とするには疑いがあると分かったということです。

 捜査当局もそういう意識を持ったわけですから、当然、弁護人も爪に着目されたと思いますけれども、当時の技術では、捜査当局も弁護人もそういうところまで解明するに至らなかったということなんだろうと思います。だから、証拠開示といっても、この事件の場合は、基本的には単なる証拠開示だけで済む話ではなかったと思います。捜査当局としては、被害者は被告人に対して抵抗するであろうから、被害者の爪に、あるいは指に何らかの証拠が残っているはずだということは、これは常識的に考えつく話ですが、結局そこまでは解明できなかったと、技術がまだそこまでの段階に至っていなかったということに尽きるんだと思います。


【記者コラム】

政界引退前の「冤罪」謝罪

 田中慶秋前法相の辞任を受けて、24日間で再登板となったが、遠隔操作ウイルスによる誤認逮捕のあと、東京電力女性社員事件の再審公判で、ネパール人のマイナリさんの無罪確定と続いた滝実法相にとって、政界引退前の法相の座はあまり座り心地の良いものではなかっただろう。

 11月9日の記者会見では、「十分な解明がなされないままに有罪判決があり、その結果15年という長い拘束期間が経ってしまったことは、大変申し訳ない」と謝罪した。しかし、マイナリさんのケースが冤罪かどうかについては「常識的に世間一般の感覚から冤罪を広くとって言えば……冤罪と言えないこともない」と言葉を濁した。

 誤認逮捕や冤罪事件で明らかになったのは、現在の警察・検察では、真摯に真実を追究するという基本的な姿勢が疎かになっていることだ。最近続く警察・検察当局の〝失態〟に対して反省を促し、今後の「戒め」とするためには「冤罪」とはっきり認めたほうが良かった。

 衆議院議員総選挙に出馬せずに政界を引退する意向を表明したのは4月だった。それ以降、野田第2次改造内閣で法相として初入閣。野田第3次改造内閣発足に際しては、高齢を理由に再任を固辞し、異例の再就任となったが、それも衆議院の解散によって短期に終わった。「もう年なので、できるだけ外してもらった方がいい」と、内閣改造の際に法相交代を求めた政治家に、警察・検察改革への強い姿勢を期待しても無理な話か。

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